約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「四鬼千秋はお前の運命の相手なのかもしれない。キザったらしくて格好つけたがりでいけ好かないが、桜子を大事に想ってる」

 わたしは頷く。涼くんがここ来られたのは四鬼さんの助力があったからだろう。

「それでも俺は四鬼千秋にお前を渡せない」

「わたしだって高橋さんに涼くんは渡せないよ。涼くん、高橋さんとキスしたの?」

 わたしも袖で拭おうとすると、指先に頬を擦り寄せてきた。

「してねぇ、振りだけだ。高橋とは別れたというより、お前を忘れちまったよ。俺を好きな気持ちは残ってるみたいだけど」

「……本気であればある程、好きな気持ちはなかなか消えたりしないよ」

「そうだな」

 涼くんは自分の心はわたしにある、とでも言うように抱き締め直す。

「これから先、今までよりもっと面倒をかけちゃうかも。本当にいいの?」

「あぁ」

「鬼でいいの? 血を飲むんだよ?」

「いい」

「涼くん、好き」

「俺も」

 短い切り返しが涼くんらしい。

「不安になる度、同じ事を聞いちゃったらごめんね?」

「聞かずに勘違いされるくらいなら、しつこく確かめてくれ」

「怒らない?」

「……怒らないようにする」

 わたしの選択に歴代の鬼姫は失望するだろうか。
 どんなキレイな言い回しをしようと、わたしには血を求める凶暴な部分がある。いつか誤魔化せない鬼の性に挫けてしまう日が来るかもしれない。だからーー。
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