約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 続けて手帳を広げる。この位置からだと文字は識別出来ないが、スケジュールが詰まっていると読み取れる。

「今週の土曜日、ご予定はありますか?」

「え? 土曜日ですか?」

「血液検査をしましょう。保護者の方には僕が伝えますし、病院の手配は任せて下さい」

「! いきなりそんな困りまーー」

 立ち上がるとタイミング悪く、目眩がした。

「大丈夫ですか?」

 額に手をやり堪える。それを何故か下から覗き込み、伺う先生。

「ーーっ!」

 視線が絡むと先生の目が赤く染まった気がして仰け反った。

「大丈夫ですか?」

 もう一度聞く先生の目は赤くない。見間違えだろうか。でも警戒の鼓動が止まらなかった。

「あはは、いきなり立ち上がったのがいけなかったみたいです」

「やはり病院に行くべきです」

 わたしは答えをはぐらかしハーブティーを再び含む。冷めてしまっても美味しい、特に香りが好みだ。

 そういえばこの香り、四鬼さんからも似た香りがした。あの時は香水と勘違いしてしまったが、そうか、ハーブティーの香りだったのか。

「そちらのハーブティーはお気に召しました?」

「はい、香りがとても」

「……そうですか」

 美味しいと再度伝えると、先生は一旦考え込む。その間にわたしも落ち着きを取り戻した。

「せっかくですが病院には行きません。これまで色々なお医者さんに診て貰い、生活習慣や食生活の改善でよくなると言われましたが、こんな感じですし」

「なるほど、効果は無かったようですね。ちなみに私が紹介する病院は【四鬼病院】、四鬼病院ならば他の病院で解決しなかった症状が緩和するかもしれません」
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