約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 しん、辺りが静かになった。嘘は良くないが、わたしは彼氏がいるくせ涼くんにちょっかいだしていると言われれば場は丸く収まるはず。

「へぇ、クラスの子とも浅見さんは年上の彼氏が居そうねって話してたんだけど、やっぱり彼氏は年上?」

 希望の言葉を引き出して満足すると思いきや、にこにこして掘り下げてくる。

「ま、まぁね」

「そうなんだ! うちの先輩とか?」

「え、えっ、えっと、その」

 彼氏の設定など考えていないので慌てて巡らせる。とはいえ、わたしの周りの男性は涼くんとお父さんのみ。

 言い淀むわたしを高橋さんはたたみ掛けてきた。涼くんへフォローをお願いする目配せをしてみたが無視されてしまう。勢いで喧嘩を買ったのだから当たり前だ。

「き、鬼月学園の人かな、ははっ。名前を言っても分からないと思うな」

 ひとつ嘘をつけば、その嘘を突き通そうと別の嘘を重ねる羽目となる。

「そんなの聞いてみなきゃ分からないよ! 教えて。鬼月学園の生徒は有名人が多いし、知ってるかも!」

 迂闊に鬼月学園の名前を出すべきではなかった。高橋さんがますます食い付く。
 どうしよう、鬼月学園に知り合いなどいない。強いて言うならーー四鬼さんと面識がある程度だ。

「あれ? 桜子ちゃん?」 

「え? 四鬼さん?」

 ちょうど過った人物が現れる。
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