約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「あぁ、良かった! 迷子になってしまって」

 迷子と言う割、しっかりした足取りでこちらへ歩いてくる。その白い制服は眩しく、みんなが彼に道を譲った。

 廊下の端へ寄る女子達が四鬼さんのオーラというか存在感に息を飲み、それから一斉に黄色い声を上げたのだった。

「あはは、鬼月学園の女の子も可愛い子が多いけど、葉月高校の子も可愛いね」

 声援に軽く手を上げて答える。高橋さんの隣に並び、微笑みかける。

「何かあったの? 僕にも教えてくれる?」

「ーーえ、え、四鬼千秋、さん?」

 どうやら高橋さんも四鬼さんを知っている様子。

「僕を知っててくれたんだ? 嬉しいな、ありがとう」

「そりゃあ四鬼学園の生徒会長で、王子様的な人だし、みんな知ってますよ」

「あはは、王子様! それは光栄だ」

 四鬼さんの登場を聞きつけた生徒等もやってきて、事態がますます賑やかになる。
 
「それで何があったのかな?」

「い、いえ、浅見さんが鬼月学園に彼氏がいるっていうから」

「桜子ちゃんの?」

「そうだ! 四鬼さんなら学園の生徒の名前がお分かりになりますよね?」

 いもしない彼氏の名前を生徒会長である四鬼さんへ告げればどうなるか、冷や汗が出てきた。
 高橋さんは嘘を暴く最強の助っ人を得て、追求のギアを上げる。
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