約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
涼くんに凄まれ、四鬼さんの腕を慌てて外す。
「あ、あの、助けてくれてーー」
そこまで伝え、胸がどくんと波打つ。
四鬼さんが真っ赤な目でわたしを見下ろした。
「四鬼さん? 目が」
赤いと指摘する前に色がみるみる消えてしまう。
「ん? 目?」
「い、いえ、なんでもありません」
自分の目を擦り、瞬きをする。柊先生に続いて四鬼さんの瞳まで赤く見えるなんて。
「四鬼さんにまで嘘をつかせてしまってすいませんでした。昨日も助けてくれたのに、きちんとお礼を言わなくてごめんなさい」
「まるっきり嘘って訳じゃないよ。世界中の女性は僕の花嫁になる可能性があるしね?」
わたしにしか聞こえないボリュームで気遣ってくれるのに、四鬼さんを真っ直ぐ見られない。
「君はなんだか不思議な子だね」
指輪をはめた方の手が頭の上に置かれた。優しく髪を撫でられ擽ったい。それでいて懐かしい。昔、こうやって髪を梳いて貰ったような感じがした。
「あんな言い方しなくても桜子ちゃんを助けられたのに。とっさに君が花嫁だと言っちゃったんだ、どうしてだろうな?」
四鬼さんも四鬼さんで何かを感じているみたい。
「え?」
「ほら、彼が待ってる。行きなよ」
わたしこそ、どうしてだろう。彼に優しくされるのは有り難い一方、当たり前という傲慢さがある。
人の優しさを当然だなんて失礼だ。わたしは去り際に大きく頭を下げた。
「ありがとう、ございました」
「どういたしまして。あぁ、送り狼には気を付けて」
「?」
それから涼くんへ駆け寄った。四鬼さんも反対方向へ進み出し、迷子と言っていたがそちらには保健室しかない。
見物人達がわたしと四鬼さんを交互に探る中、事態へピリオドを打つみたいに携帯電話が鳴った。
「あ、あの、助けてくれてーー」
そこまで伝え、胸がどくんと波打つ。
四鬼さんが真っ赤な目でわたしを見下ろした。
「四鬼さん? 目が」
赤いと指摘する前に色がみるみる消えてしまう。
「ん? 目?」
「い、いえ、なんでもありません」
自分の目を擦り、瞬きをする。柊先生に続いて四鬼さんの瞳まで赤く見えるなんて。
「四鬼さんにまで嘘をつかせてしまってすいませんでした。昨日も助けてくれたのに、きちんとお礼を言わなくてごめんなさい」
「まるっきり嘘って訳じゃないよ。世界中の女性は僕の花嫁になる可能性があるしね?」
わたしにしか聞こえないボリュームで気遣ってくれるのに、四鬼さんを真っ直ぐ見られない。
「君はなんだか不思議な子だね」
指輪をはめた方の手が頭の上に置かれた。優しく髪を撫でられ擽ったい。それでいて懐かしい。昔、こうやって髪を梳いて貰ったような感じがした。
「あんな言い方しなくても桜子ちゃんを助けられたのに。とっさに君が花嫁だと言っちゃったんだ、どうしてだろうな?」
四鬼さんも四鬼さんで何かを感じているみたい。
「え?」
「ほら、彼が待ってる。行きなよ」
わたしこそ、どうしてだろう。彼に優しくされるのは有り難い一方、当たり前という傲慢さがある。
人の優しさを当然だなんて失礼だ。わたしは去り際に大きく頭を下げた。
「ありがとう、ございました」
「どういたしまして。あぁ、送り狼には気を付けて」
「?」
それから涼くんへ駆け寄った。四鬼さんも反対方向へ進み出し、迷子と言っていたがそちらには保健室しかない。
見物人達がわたしと四鬼さんを交互に探る中、事態へピリオドを打つみたいに携帯電話が鳴った。