【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

プロローグ

「ローゼマリー!!なによこの廊下っ! もっとしっかり拭きあげなさいっ! 水浸しじゃない!!」
「申し訳ございません、シスター」

 バケツに雑巾を浸して汚れを落としたあと、もう一度ぎゅっと絞って拭きますが、私の力ではなかなかしっかり水を絞れなくて床に水分が残ってしまいます。
 そんな様子を見たシスターは苛立ってバケツを蹴り上げると、そのまま「掃除をしておきなさいよ」と言い残して去っていきました。
 じんわりとまた木の板に水が入り込み、自分のまわりを見渡すとさっきよりも水浸し。
 これはまた一段と気合をいれて拭かなければなりませんね。
 ずれ落ちてきた服の袖を上げて雑巾でまた拭き始めます。

 ああ、今日もシスターを怒らせてしまったから食事はきっとなしですね。

 言われた通りに廊下を拭きあげてバケツを流し台にかけると、手を洗って自室へと戻ることにしました。
< 1 / 131 >

この作品をシェア

pagetop