【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「やっぱりここのケーキはどれも美味しいね」
「(ふんふん)」

 紅茶をゆっくりとそのあと飲みながらお兄さまは私にお茶会のことについて聞かれました。

「私のことをバカにされて怒ってくれたんだって?」
「(……こく)」

 でも、本当によかったことなのか、あれはヴィルフェルト公爵家の名を汚す行為ではなかったのかとお兄さまに紙で聞きました。

「私がローゼの立場でも同じことをしたよ。そのくらいローゼが家族を大事に思ってくれていて私も父上も嬉しい。大丈夫だよ、何も悪いことはしていない」

 「家族を大事に」ということが私に重くのしかかりました。
 やはり、お兄さまは私のことを家族として、妹として見ていない。
 わかっていたのに、なんだか現実を突きつけられたようで悲しい。

「ローゼはヴィルフェルト家になくてはならない存在だよ。だから、あまり気負わないでほしい。ローゼの努力家なところと素直なところは私やみんなわかっているから」
「(こく)」

 私はその時頷きましたが、じゃあお兄さまにとって私ってなんなの?

 そんな質問はとても聞けませんでした。



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