【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 家に戻ると、クリスタさんが私のところにいらっしゃってお父さまが呼んでいると伝えてくださいました。
 私は急いでお父さまのところに向かいます。

 お父さまに呼ばれるのもしばらくぶりだったような気がしますね。
 執務室に呼ぶということは何か内緒のお話や重要なお話でしょうか。

 ノックをしたあと、そっとお部屋に入ると中にはとても神妙な面持ちのお父さまがいました。

「こっちへ来てくれるか?」
「(こく)」

 私は机に向かうお父さまの近くに歩いていきました。
 お父さまの真正面に立つと、お話は始まりました。

「隣国の第二王子であるオリヴィエ王子は覚えているな?」
「(はい、もちろんです)」

 もしかして先日王子にご迷惑をおかけしたことで、何か処分などを受けることになったのでは……。
 お父さまの口からそのようなお言葉が出るのを覚悟して待ちます。
 すると、お父さまは意を決したように私に告げました。


「ローゼマリー。王国よりお前に隣国のオリヴィエ・ブランジェ第二王子との婚約の要請が出た」

「──っ!!」

 予想外の内容で私は何も言えませんでした。
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