【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ローゼ?」
「(私が傍にいます)」

 きっと悲しかったのはお父さまだけではなかったはず。
 お兄さまも悲しくて、寂しくて、辛かったに違いありません。
 私にお母さまの代わりはできませんが、こうやって少しでも傍にいたら寂しくないのではないでしょうか。

「傍にいてくれるのかい?」
「(はいっ!)」
「ありがとう、ローゼ」

 私はお兄さまに気持ちが届いたことが嬉しくて、こんな夜がいつまでも続いたらいいのになと思いました。
 でも、私はお兄さまにこの時聞けなかったことがあります。


 お兄さまにはそんな風に好きな人はいるんですか?


 心の中でそんな質問が出て聞きたかったけれど、なぜそう思ったのかは今の私にはわかりませんでした──

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