【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
第11話
「では声を出してみてください」
「(あーーーーー)」
私は大きな口を開けてお医者さまに向けて声を出そうとしますが、やはりシンとした空気が流れるだけ。
「やはりまだ出ないですね。根気強く様子を見てみましょう」
「(こく)」
お医者さまはクリスタさんに案内されながら、お部屋をあとにしました。
「大丈夫だよ、焦らなくていいから」
隣に付き添っていたお兄さまが私を慰めるように背中をさすってくださいます。
社交界デビューを果たした私はその後もマナーの練習や読み書きの勉強を重ね、少しずつではありましたが前に進んでいきました。
ですが、最近はお仕事が忙しく、お兄さまと勉強ができていません。
もっと言うと食事のときもいらっしゃってないので、会うこともできていないのです。
寂しい、なんて思うのは私の単なるわがままかもしれません。
『お仕事をしている様子を見てみたい』
そう思ってしまって、以前の私ならご迷惑になるからとすぐにその考えを止められたのですが、最近はどこかおかしいのか、お兄さまのことになると身体が勝手に動いてしまいます。
いけないとわかっていても、好奇心や欲望が勝ってしまう。
何か私に悪い変化が起こっているのでしょうか。
そう思いながらも、ちょっとだけなら、という気持ちで私は廊下に出てしまいました──
「(あーーーーー)」
私は大きな口を開けてお医者さまに向けて声を出そうとしますが、やはりシンとした空気が流れるだけ。
「やはりまだ出ないですね。根気強く様子を見てみましょう」
「(こく)」
お医者さまはクリスタさんに案内されながら、お部屋をあとにしました。
「大丈夫だよ、焦らなくていいから」
隣に付き添っていたお兄さまが私を慰めるように背中をさすってくださいます。
社交界デビューを果たした私はその後もマナーの練習や読み書きの勉強を重ね、少しずつではありましたが前に進んでいきました。
ですが、最近はお仕事が忙しく、お兄さまと勉強ができていません。
もっと言うと食事のときもいらっしゃってないので、会うこともできていないのです。
寂しい、なんて思うのは私の単なるわがままかもしれません。
『お仕事をしている様子を見てみたい』
そう思ってしまって、以前の私ならご迷惑になるからとすぐにその考えを止められたのですが、最近はどこかおかしいのか、お兄さまのことになると身体が勝手に動いてしまいます。
いけないとわかっていても、好奇心や欲望が勝ってしまう。
何か私に悪い変化が起こっているのでしょうか。
そう思いながらも、ちょっとだけなら、という気持ちで私は廊下に出てしまいました──