【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 私はお兄さまの言葉通り固まったように身体を止めると、視線だけお兄さまに注ぎます。
 すると、お兄さまの顔がどんどんどんどん近くに来ます。
 え、お、お兄さまっ?!
 視界の中で大きくなっていくお兄さま。
 距離はどんどん近くなってあっという間にすぐそばに。

 私は思わず反射的に目をつぶってしまいました。
 すると唇の近くに何か柔らかいものが触れた感覚があって、びっくりして今度は目を開けました。

「ほら、クリームがついてる」

 お兄さまはご自分の指についたクリームを見せて、それをぺろりとなめました。

「──っ!!!!」

 キスされたのかと思った……。

 なんて恥ずかしくて声が出ても言えませんが、なんだか私ばかりドキドキさせられているような気がして、少しお兄さまが意地悪に思いました──

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