【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「よく父上と母上はここでお茶をして楽しんでいたよ。結婚記念日には毎年ここでディナーをしていてね、素敵だなって思った」

 それは素敵です……。お母さまに一度でいいからお会いしてみたかったな……。

「あの蝶の髪飾りあるだろう?」
「(こく)」
「あれは父が母に贈ったものらしくてね。母に聞いたら昔結婚していない時にプレゼントで渡されたって」

 では、お父さまがお母さまのことを先に好きだったのでしょうか。
 お兄さまも同じことをどうやら思ったらしく、お母さまに聞いたのだそう。
 そしたら……。

「『実はね、お父さまは覚えていないけれど、小さな頃にすでに会っていたのよ、私たち。昔からお母さんはお父さまのこっそり好きだったの。内緒よ?』って」
「(まあっ!)」

 お母さまのほうが先に好きだったんですね!
 嬉しそうに、楽しそうに語るお兄さま。本当にお二人のことが好きなことが伝わってきます。

 私は素敵だと思ったと伝えるために胸に手をあてて目を閉じ、その次に目を開けて微笑みました。
 どうやら思いは伝わってようで、「ありがとう」と言ってくださいました。

 お兄さまとそんな素敵な恋愛がしてみたいな、なんて思います。
 夢でもいいので、そんな未来が来ればいいな。
 私は紅茶を一口飲んで、お兄さまをまた見つめてしまいました。

 ああ、お兄さまがやっぱり大好きです──
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