崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
そんな天莉とは対照的に、尽の方はちょっぴり不機嫌。
まぁ自業自得とはいえ、痛い目に遭わされたのだから仕方ないのだが。
***
「――で、あの男、一人にしてみたらどうだった?」
〝あの男〟というのは風見課長のことだろう。
机上に広げられたままになっていた小豆色の婚姻届をおざなりに畳んで端へ滑らせると、尽がすぐそばに立つ直樹へ視線を投げかけた。
「高嶺常務の目論見通り、六階へ向かいました」
「あの男、プライドだけは高いみたいだからな。あんだけコケにしてやったんだ。すんなりと引き下がってもらっては面白くない」
天莉と尽を向かい合わせに座らせて、自分もどちらかへ着座するのかと思いきや、そこら辺はやはり秘書としての立場をわきまえているのだろう。
直立の姿勢のまま直樹が今見てきたばかりのことを尽に報告した。
そんな直樹に、尽がしたり顔で返すのを見遣りながら、天莉は懸命に思いを巡らせる。
どうやら今の二人のやり取りから鑑みるに、自分が課長と一緒に退室させられなかったのは、風見斗利彦を単独行動にさせて泳がせたいという意図があったようだ。
(単に手を握り続けていたかったから、とか馬鹿みたいな理由じゃなくて良かった)
そんなことはないと分かっていても、尽からの先程までの執着ぶりを思い出すと、ついそんなことを思わずにはいられない。
口を挟んでいいものか戸惑ったけれど、同席させてくれているということは、天莉にも発言権が与えられていると考えても良いだろう。
そう判断した天莉が、「六階って……」とつぶやいたら、
「営業課のフロアだね」
尽が、即座に天莉の言葉を拾って繋いでくれた。
元彼の博視の配属先だから、天莉もそこが営業課なのはよく知っている。
でも――。
まぁ自業自得とはいえ、痛い目に遭わされたのだから仕方ないのだが。
***
「――で、あの男、一人にしてみたらどうだった?」
〝あの男〟というのは風見課長のことだろう。
机上に広げられたままになっていた小豆色の婚姻届をおざなりに畳んで端へ滑らせると、尽がすぐそばに立つ直樹へ視線を投げかけた。
「高嶺常務の目論見通り、六階へ向かいました」
「あの男、プライドだけは高いみたいだからな。あんだけコケにしてやったんだ。すんなりと引き下がってもらっては面白くない」
天莉と尽を向かい合わせに座らせて、自分もどちらかへ着座するのかと思いきや、そこら辺はやはり秘書としての立場をわきまえているのだろう。
直立の姿勢のまま直樹が今見てきたばかりのことを尽に報告した。
そんな直樹に、尽がしたり顔で返すのを見遣りながら、天莉は懸命に思いを巡らせる。
どうやら今の二人のやり取りから鑑みるに、自分が課長と一緒に退室させられなかったのは、風見斗利彦を単独行動にさせて泳がせたいという意図があったようだ。
(単に手を握り続けていたかったから、とか馬鹿みたいな理由じゃなくて良かった)
そんなことはないと分かっていても、尽からの先程までの執着ぶりを思い出すと、ついそんなことを思わずにはいられない。
口を挟んでいいものか戸惑ったけれど、同席させてくれているということは、天莉にも発言権が与えられていると考えても良いだろう。
そう判断した天莉が、「六階って……」とつぶやいたら、
「営業課のフロアだね」
尽が、即座に天莉の言葉を拾って繋いでくれた。
元彼の博視の配属先だから、天莉もそこが営業課なのはよく知っている。
でも――。