崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
確かに、自分たちの関係を誰一人として公表していない状態ならば、『誰も知らないんだから問題ないです』と言い切ることが出来ただろう。
でも――。
(課長が知ってる……)
天莉へ不当なパワハラを仕掛けてきていた総務課長の風見斗利彦を牽制するため、彼には二人の関係を公言してしまっている。
尽が、『口外するなと釘は刺しておいたけれど、江根見部長の耳には確実に入っているだろうね』と言っていたことも覚えている天莉だ。
尽の執務室を出た直後の、風見の動きを鑑みてもそれは真実だろう。
(うーーーーっ)
心の中で唸ってみたところで、そうなると尽が言う通り。
自分が余りにもお粗末な格好をしていたら、〝高嶺尽の価値〟を下げることになりかねない。
それは絶対に嫌だと思った天莉だ。
天莉は尽を恐る恐る見上げると、「だったら、ひとつだけ……」と渋々ながらつぶやいていた。
なのに。
「は? 一着だけ? こんなに見繕ってもらったのに?」
最低でも三〇着は……とかバカなことを言い募る尽を、天莉はじろりと睨み上げた。
尽は、この店舗に今現在展示されているフォーマルな装いの大半を買い占めるつもりなのだろうか。
「着る予定があるのは、今のところ親睦会の日だけです。一着あれば十分なのに、そんな風に無駄遣いしても平気な人、私、嫌いです」
わざと「です」と語尾を丁寧にして、距離感を醸し出すような口調できっぱり突っぱねたら、「嫌い」と言う文言が効力を発揮したのか、尽がグッと押し黙った。
「……ねぇ、天莉。せめて十着――」
「聞こえませんでしたか? 一着だけです!」
くぅーん、と幻の垂れ耳と垂れしっぽを装着した尽に、だけど今回ばかりは天莉だって負けていられない。
でも――。
(課長が知ってる……)
天莉へ不当なパワハラを仕掛けてきていた総務課長の風見斗利彦を牽制するため、彼には二人の関係を公言してしまっている。
尽が、『口外するなと釘は刺しておいたけれど、江根見部長の耳には確実に入っているだろうね』と言っていたことも覚えている天莉だ。
尽の執務室を出た直後の、風見の動きを鑑みてもそれは真実だろう。
(うーーーーっ)
心の中で唸ってみたところで、そうなると尽が言う通り。
自分が余りにもお粗末な格好をしていたら、〝高嶺尽の価値〟を下げることになりかねない。
それは絶対に嫌だと思った天莉だ。
天莉は尽を恐る恐る見上げると、「だったら、ひとつだけ……」と渋々ながらつぶやいていた。
なのに。
「は? 一着だけ? こんなに見繕ってもらったのに?」
最低でも三〇着は……とかバカなことを言い募る尽を、天莉はじろりと睨み上げた。
尽は、この店舗に今現在展示されているフォーマルな装いの大半を買い占めるつもりなのだろうか。
「着る予定があるのは、今のところ親睦会の日だけです。一着あれば十分なのに、そんな風に無駄遣いしても平気な人、私、嫌いです」
わざと「です」と語尾を丁寧にして、距離感を醸し出すような口調できっぱり突っぱねたら、「嫌い」と言う文言が効力を発揮したのか、尽がグッと押し黙った。
「……ねぇ、天莉。せめて十着――」
「聞こえませんでしたか? 一着だけです!」
くぅーん、と幻の垂れ耳と垂れしっぽを装着した尽に、だけど今回ばかりは天莉だって負けていられない。