崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 意に添わないことをしたら、博視(ひろし)にとっては上司に当たる父親――江根見(えねみ)部長――に言い付けると言われていたのだって、脅しじゃないのかな?とすら思って。

 だとしたら、自分に酷いことをした相手ではあるけれど、博視のことがちょっぴり気の毒にも思えて。

(あー、ダメっ。私ったらまた悪い癖が出てる)

 両親から、それは天莉(あまり)の好いところでもあり、悪いところでもあるとよく指摘される部分なのだけれど。

 あんなに酷いことをされたのに、何を同情なんてし掛けているんだろう。

 そう思いつつも、何となく博視が江根見(えねみ)紗英(さえ)にいいように操られているように思えて、気になってしまうのだ。

(こんなこと(じん)くんにバレたら叱られちゃう)

 絶対そうだ。

 なのに――。


(妊婦さんのお腹って、一体いつぐらいから目立つようになるんだろう?)

 なんて要らないことにまで思いを馳せてしまう始末。

 博視にフラれた二月八日(たんじょうび)からおよそ二ヶ月。
 あの時には既につわりがどうのと言っていた気がするから、恐らく妊娠初期だったんだろう。

(だとしたら今、江根見(えねみ)さんは何ヶ月目ぐらい?)

 ウェストを押さえつけないようなデザインのワンピースを着ているからかも知れないが、紗英のお腹には何の変化も見られない気がして。

(もう少ししたらふっくらしてくるのかな?)

 天莉自身、妊娠経験がないので妊娠週数の数え方はおろか、お腹の膨らみ具合いなどもよく分からないけれど、初期の頃はマタニティマークを付けないと周りには気付いてもらえないと聞くし、そんなもんなのよね?と自分に言い聞かせる。

 紗英の妊娠を知っている人ばかりじゃないはずだし、むしろ知らない人の方が多いはずだと思った天莉は、何の罪もないお腹の中の赤ちゃんのためにも、そこは私情を挟むのはやめようと思った。
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