崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
(あ、何か食べなきゃ……)

 そう思ったと同時、クラリと視線が傾いて。

(あ、れ?)

 いくらお酒に弱いと言っても、グラスにたった一杯のシャンパンで、この回り方は異常だ。

 テーブルに手を付いて倒れることだけは回避した天莉(あまり)だったのだけれど。

 そんな天莉の顔を覗き込むようにして、紗英(さえ)が「あれぇ? 先輩(せんぱぁい)。もしかして酔っぱらっちゃいましたかぁ?」と《《どこか嬉しげに》》声を掛けてくる。
 『江根見(えねみ)さん、もしかしてお酒に何か入れた?』と問いかけたいのに、クラクラし過ぎてうまく受け答えが出来ない。

(な、んで?)

 意識は冴えているのに、身体が言うことをきかないことに、プチパニックの天莉だ。

「わぁー、大変(たいへーん)。誰かぁ、お願ぁ~い、助けてくださぁーい」

「どうしたの?」

 わざとらしく騒ぐ紗英の言葉に、近くにいたらしい《《誰か》》がすぐに反応してくれて。

「わぁー、博視(ひろし)ぃ、優秀(ゆーしゅー)。ちゃんと紗英のそばにいてくれたんだねぇー? ほら見てぇ? 先輩がぁ、紗英のお()りを頼まれたくせにお酒飲んで潰れちゃったのぉ。でねぇ。紗英は優しいからぁ、先輩に自分のお部屋を貸してあげようと思ってぇ。ほらぁ、さっき話したでしょぉ? 紗英、会場出てすぐのところにパパからお部屋を取ってもらってるって。ねぇ博視ぃ、とりあえずそこまで先輩を運んでくれるぅ?」

 目立つからお姫様抱っこは無しだと、紗英が博視に釘を刺している声を天莉はぼんやりした頭で他人事(ひとごと)のように聞いて。

(気持ち悪い……)

 身体の自由が全く利かないことも、博視に肩を支えられていることも、不用意に飲んでしまったお酒の回りが、《《異常なくらい早い》》ことも。

 天莉は何もかもが納得いかなくて、気持ちが悪くてたまらないと思ってしまった。
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