崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「玉木さん、心配なさらなくとも大丈夫です。本日の高嶺(たかみね)常務の業務はほぼ終了しています。もちろんいくつか残っているものもありますが、それらは他の人間でも対応できるような些末(さまつ)なことばかりです。なので今は彼にしっかり責任を取って頂いて、ご自身の回復に努めて下さい。貴女が元気になって下さらないと、その男は使い物になりません。……正直ポンコツ過ぎて会場には戻せないと、わたくしは考えています」

 (じん)が口を開くより先。ソファ上で尽に抱き締められたままの天莉(あまり)に視線を合わせるように少し身を屈めた直樹が、どこかおどけたように言って、柔らかい笑みを向けてくれる。

 本音を言うと、尽にずっとそばへいて欲しいと思っていたことも確かだ。
 天莉は、もしもそれが許されるならば、そうさせてもらえると嬉しいな、とぼんやり思って。

直樹(なお)、お前……」

「真実でしょう? それに、貴方のことだ。残務に関してはあの方々に根回し済みなんでしょう?」

「……ああ、どうせ後から合流するつもりでいたからそのついでに頼んできた。悪いがあっちのサポートをしてやってもらえるか?」

「元よりそのつもりで貴方にお部屋を取ったんですけどね」

「だよな。ホントに有難う。あと……今回の件に関与した者たちの沙汰については俺が直々に動きたい。逃げ道は塞いだ上で、そこはうまく留め置くようにしといてもらえるか?」

「相変わらず無理難題を吹っかけてきますね」

「それだけお前のことを信頼してるってことだよ、《《直樹》》。――もし璃杜(りと)が天莉と同じ目に遭わされたらお前だって自分で、って思うだろ? それと一緒だと思って動いてくれればいい」

「出してくる例えが秀逸すぎて腹が立ちますね」

 ふっと笑って直樹が一礼して去っていくのを見届けてから、尽が腕に力を込めてくる。

「さて、そうと決まればこんなところに長居は無用だ。俺たちも移動しようか」
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