崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「はっ? 何で俺にもあるんですかっ。俺は何も罪なんか犯してない!」

 桃坂(ももさか)弁護士から数枚の紙片を目の前に置かれた博視(ひろし)が、心外だと言わんばかりの表情をする。

 紗英(さえ)は思考回路が停止したようにぼんやりと机上の書類を眺めていた。


「何も? 横野さん。貴方は天莉(あまり)をそこにおられる婚約者の江根見(えねみ)紗英さんと二人、強姦未遂の現場になった個室まで運びましたよね?」

「なっ⁉︎ 何でそんなことまで!」

「ホテル内の防犯カメラにバッチリ映っていましたのでね」

 桃坂(ももさか)弁護士の力を借りて、ホテルから開示してもらった会場へ設置された防犯カメラの映像には、会場内からぐったりした天莉を運び出す二人の姿があって……。
 廊下へ設置されたカメラには、問題の個室へ天莉を連れ込む姿も映っていた。

 そうしてその続きとでも言おうか。

 直樹が則夫(のりお)に渡る前に回収してくれた隠し撮り映像にも、天莉が博視と紗英によって、会場そばの個室でベッドへ寝かされる様が録画されていた。

 天莉のため、表へ出すつもりはない映像だが、江根見則夫の仕掛けていた卑劣(ひれつ)な罠が、逆に娘とその婚約者の犯行を裏付ける証拠になるだなんて、皮肉な話だ。

「加えて、貴方は沖村と伊崎がその個室へ入る様子を確認しておきながら止めなかった……。ばかりか、邪魔が入らぬよう見張り役まで(つと)めていますよね?」

「そ、それは全部紗英に頼まれてっ」

「博視、酷いっ。みんな紗英のせいにするのぉっ⁉︎」

「ほぉ、江根見紗英さんはずっと貴方の行動を監視していたのですか? ――違いますよね?」
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