崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「そうだよ。少しの間だけど仲良くしようね」

 しゃがみ込んでふわりの視線に自分の目線を合わせた直樹がそう告げて。そんな父親にふわりが嬉しそうにニコッと微笑んだ。

 そうして(じん)に視線を移すと、
「じんちゃ、かえってくるの、おそくなってもいーよ? ふわりがちゃんとおセワしてゆから」
 オレオに夢中のふわりが、尽を見上げてそんなことを言うから。
 天莉(あまり)はおかしくて思わず吹き出してしまった。

「おねーちゃん、じんちゃのオヨメしゃ?」

 そのせいでふわりの気を引いてしまったらしい。

 不意に小さな手でキュッと手指を掴まれた天莉は、温かくてしっとりしたふわりの手にキュンとしてしまう。

「うん。そうなの。よろしくね?」

 ふわりの視線に合わせるようにしゃがみ込んで答えたら、「うん!」と元気に答えてくれた。


***


「ねぇ天莉(あまり)。ハネムーンは海外でも良かったんだよ?」

 新体制に移行したばかりの多忙の最中。
 父――(ひらく)から挙式後に一週間の休みをもぎ取った(じん)が、オレオと同じハチワレにゃんこのキャラクターがメインに据えられたテーマパーク『ニャンダー()ドリーム()ランド()』内にあるホテルへチェックインするなりそうつぶやいた。

 結婚式の打ち合わせなどをしている時に「ハネムーンはNDLに行きたいな?」と言った天莉に、尽はまだ納得がいかないようだ。

 何しろNDLは二人の居住区から新幹線でたったの一時間の距離。

 日帰りでだって十分に遊びに行ける場所なのだ。


「ううん、海外はイヤ。移動に時間取られるの、もったいないもん」

 天莉が尽の手を握って「それよりこうして尽くんと沢山沢山くっ付いていたい」と言ったら、たまらないみたいにギュッと抱き締められた。

「ホント、天莉には敵わないな」

 すぐ耳元で尽がささやく声を聞きながら、天莉はこういう風に一緒にいられる時間の大切さをしみじみと噛みしめる。
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