崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
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 アスマモル薬品に転職して(じん)のそばで、直樹とともに彼の秘書の真似事を始めた天莉(あまり)だったけれど――。

 仕事で一緒にいても、副社長に就任したばかりでバタバタしている尽とはほとんど業務的な会話しか出来なかった。

 オマケに天莉には残業させたくないと、定時には一人早々に家へ帰らされてしまうので、遅くまで仕事をして帰ってくる尽とは私生活でもすれ違ってばかりで。

 尽はそれでもうとうとしながら天莉を存分に甘やかしてくれたのだけれど、天莉としては尽の体調が心配でそれどころではなかった。

 尽は無理し過ぎると熱が出ることがあるのだけれど、多忙を理由にそれを隠すところがあるので尚更。

 そんな尽が挙式や新婚旅行のために取ってくれた休暇を、天莉は出来れば彼自身の骨休めに使って欲しいと思っていた。

 それに――。

 天莉としては尽と一緒にいられるならば、それだけで幸せだったから。

 正直言うと旅行なんて行けなくても――家で一緒に過ごすだけでも一向に構わないとすら思っていたくらいだ。

 それではさすがに尽が納得しないから割と近場のNDL行きをおねだりしたのだけれど。


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「二名で予約した《《高嶺》》です」

 ホテルへチェックインする際、フロントで(じん)が告げたのは天莉(あまり)にも耳馴染みの深い〝高嶺(たかみね)〟という姓で。

 結婚に際して、尽は天莉に高嶺と田母神(たもがみ)、どちらの姓になりたいかを問うてくれた。

 だけどそれは天莉がどうこう口出しをする問題ではないと思ったから、全ての決定を尽と彼の両親にゆだねたのだ。
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