崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 当然薄暗い院内をただただウロウロと歩き回ればいいというものではなく、あちこちでお化け役のスタッフに驚かされるし、時には足がすくみそうになるような恐怖の試練を課せられたりする。

 (じん)は今まで自分には苦手なものなんてないと思っていたのだけれど、存外にホラー(そういう)系がダメだったのだと、そのアトラクション内に入って気付かされた。

(考えてみたら、好んで怪談番組とか観るようなことは、したことがなかったな)

 入ってすぐ、蛍光灯がチラチラと点滅するロビーの総合案内で受けた説明(チュートリアル)で、途中離脱(エスケープ)も出来ると言われたので、天莉(あまり)(おび)えたらそうしようと思っていた尽だ。

 だが実際は施設内で渡されたLEDライトを片手に、手を繋いでくれている天莉が、自分を置いてスタスタと先に行ってしまうんじゃないかと気が気じゃなくて。

 何度か「天莉、怖いようなら非常口から外に出ても大丈夫だからね?」だの「最後まで行き着けるのは入場者の六割ぐらいだって言ってたし、離脱は恥ずかしいことじゃないからね?」とか声を掛けてみたのだけれど「うん。どうしてもの時はそうしようね、でも私、景品ゲットしたいし、頑張る!」と非情な答えしか返ってこなかった。

 驚かされたり試練を与えられたりするたび、口から心臓が飛び出しそうに怖かった尽だけれど、愛する天莉の前ではいつだって頼られる男でいたい。

 その一心で、何なら時には天莉を(かば)うようにお化け役スタッフとの間に立って、(たて)になるような真似までしたのだけれど。
< 328 / 351 >

この作品をシェア

pagetop