崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
(じん)くん、怖くないの?」

 ギュウッと自分の手を握りしめてくる天莉(あまり)の小さな手の(ぬく)もりを心の支えにして〝完璧な騎士(ナイト)役〟を演じた尽だ。

 だが、さすがに長かったクエストをクリアして外に出る頃にはくたくたに疲れ果てていた。

 きっと、尽と同じような人間が多いのだろう。

 NDLは、『猫又(ねこまた)総合病院(廃)』の出口すぐそばに、お化け屋敷の怖さを払拭(ふっしょく)してくれる雰囲気の、とってもメルヘンチックなカフェが併設されていた。

「天莉、沢山歩いたし、あそこで少し休憩しようか?」

 難易度高めのアトラクション、『猫又(ねこまた)総合病院(廃)』のクリア記念品としてもらえるNDLのマスコットキャラクター、ハチワレにゃんこの『牛ニャカ丸』と『ハッチ姫』が描かれた三色ボールペンを嬉し気に見詰める天莉へ声を掛けたら、「うん」と微笑んでくれた。

 その頭に黒い猫耳のカチューシャがくっついているのを見て、(可愛いな)と表情を緩めた尽だったのだけれど、考えてみれば、自分の頭にも同じものがくっついているんだと思い出して無意識に頭のそれに触れてしまう。

「大丈夫だよ、尽くん。落っことしてないよ?」

 クスクス笑いながら天莉にニコッと笑い掛けられて、尽は「いや、それを心配したわけじゃ……」とつぶやいたのだけれど、天莉が凄く嬉しそうに笑うので、まぁいいかと思って。

 実際こんな浮足立ったものを付けていられるのは、こういう施設内限定だ。

 天莉が喜んでいるのだから良しとしようではないか。

 それに、ざっと周りを見回してみただけでも、自分たちのように猫耳を付けた人たちがちらりほらりと園内を歩いているのが目につくから。
 集団心理と言うか何というか。
 それだけでホッと出来るから不思議だな、と思った尽だ。
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