崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
***

「そういえば……」

 ニャンダ―ドリームランドで話題の、期間限定タピオカ入りスパークリングアイスティーを一口飲むなり、天莉(あまり)がふと表情を曇らせた。

「どうした? まさか気分でも悪くなったのかね?」

 もしかしたらホッとした途端、先ほどのお化け屋敷での疲れがドッと押し寄せてきたのかも知れない。

 実際(じん)自身、天莉が目の前にいなかったら、こんな風に気丈に振る舞えているかどうかすら怪しいのだ。

 注文時、「折角こういうところに来たんだから尽くんも限定ドリンクを飲めばいいのに」と天莉に苦笑されながらホットのブラックコーヒーを頼んだのだって、本音を言えば冒険出来るような心のゆとりがなかったからだ。

 日頃尽が好んでいる珈琲よりも少しローストが浅めであっさりした味わいなのは、万人受けする味を狙っているからだろうか。

 そんなことを思いながらコーヒーを飲んでいた尽だったけれど、天莉の言葉にソーサーへカップを戻すなり、机上へ置かれた天莉の手にそっと触れた。

「ううん。そういうんじゃないの。ただ……今、こんな場所で言う話じゃないかも知れないなって思って……」

 そこで躊躇(ためら)うように瞳を揺らせつつも、「でも、どうしても心の片隅に引っ掛かってしまっているから、日常が戻ってくる前にちゃんと聞かせて欲しいの」と天莉が尽をじっと見詰めてくる。

「何か不安なことがあるの? 俺が答えられることで天莉の心が晴れるんなら何でも聞いて?」

 尽が天莉の手を握ったままの手指にそっと力を込めると、天莉が「あのね……」と話し始めた。
< 330 / 351 >

この作品をシェア

pagetop