崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
***

天莉(あまり)、俺、今日は一人で風呂に入りたくないんだけど……」

 わざとらしいくらいに《《しおらしい》》様子で(じん)からそう声を掛けられた天莉は、「えっ」とつぶやいた。

「ほら、昼間に結構長いこと廃病院をうろついただろう? 天莉にはもう分かってると思うから恥を忍んで暴露するけどね……俺、どうやらああいうのが余り得意じゃなかったみたいだ」

 もちろん、そのことには薄々勘付いていた天莉だ。

 ホテルの部屋に入るなり尽が何かに(すが)りつきたいみたいにギュッと背後から自分を抱きしめてきたのだって、きっとそう言うことだと思ったし。

 でも――。

「こ、ここのお部屋のお風呂はとっても明るかったし、……それに、ほらっ。あ、あちこちに牛ニャカ丸とハッチ姫がいるからきっと大丈夫だよ? 尽くんもさっき一緒に浴室へ入ったから知ってるでしょう?」

 洗面所に用意されていたアメニティにも、風呂場に置かれていた手桶にも、可愛い猫キャラたちが(えが)かれていた。

 尽と一緒に二人羽織(ににんばおり)状態で浴槽にお湯を溜めに入った際、チェック済みの事実をソワソワと並べ立てたら、尽が「ねぇ天莉。俺たち、いま新婚旅行中なのに……キミは俺のことを甘やかしてくれないつもりなの?」とお得意の犬耳とふさふさ尻尾の幻を見せつけてくる。

「俺は天莉の希望を結構叶えたと思うのに……」

 極めつけのように『猫又総合病院(廃)(おばけやしき)』に付き合わせたことを示唆(しさ)された天莉は、グッと言葉に詰まって。

「へ、変なこと……しない?」

 無駄だと分かっていながらそう問いかけたら「もちろん、《《変なことなんて》》しないよ?」とにっこり微笑まれた。
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