崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「ご、ごめんなさいっ、(じん)くん。……私」

「構わない。……男と違って女性は赤ん坊を胎内で守り育て、あまつさえ痛い思いをして産み出さねばならん。……天莉(あまり)が迷うのも当然だと思う」

 だからそこは謝らなくていいのだと付け加えながら、尽は天莉のおでこにやんわりと口付けた。

「その上でもう一度だけ聞かせて? もし許されるなら天莉……。俺に家族をくれないか?」

 切ないまでに真摯(しんし)に投げ掛けられた尽の言葉に、
「尽くん……っ!」
 天莉は彼の名を呼ぶなり尽をギュッと抱き締め返して。

「私、産みたい……! 尽くんとの子供……!」

 そう答えていた。

 その上で、天莉は「でも……ひとつだけお願いがあるの……」と尽を見上げておねだりした。


***


 天莉(あまり)に、「するなら……ちゃんとベッドで抱いて欲しい……。ダメ?」と潤んだ目で見上げられた(じん)は、すぐさま天莉を横抱きに(かか)え上げた。

「ダメなわけがないだろう!」

 せっかく熱い湯を張った浴槽には浸からず終いだったけれど、この際そんなことはどうでもいいと思って。

 家ならば激情に駆られるまま、お互い濡れた身体のままベッドへ雪崩(なだ)れ込むところだけれど、ここはホテルの一室だ。

 そんなことをして客室係の手を(わずら)わせることを、天莉は望まないだろうと思い至った尽だ。

 幸い二人とも髪の毛はそれほど濡れていない。

 はやる気持ちを抑えながら天莉にバスローブを羽織らせると、尽は自分も同じようにした。

「濡れたままは良くないからね」
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