崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 (じん)の言葉に、天莉(あまり)がますます困惑したような顔をするから。

「だって……もし子供が出来たら、俺も手伝わないと大変なことになるだろう?」

 天莉が身籠(みごも)ったなら、合理的に会社から天莉を引き離せる。
 だが専業主婦にしてしまったからと言って、尽は天莉を家政婦みたいに扱うつもりは微塵もないのだ。

 今は天莉が家事をするのが楽しいと言ってくれているから甘えさせてもらっているけれど、例えば天莉が体調の悪い時なんかには、自分が動けなければ困るとも分かっている。

 天莉がダウンした時、少しでも元気づけたいと思うのに……お粥の作り方にすら四苦八苦するような今の自分のままでは話にならないとも自覚しているつもりだ。

「俺は子育てもキミ一人に押し付けるつもりはないし……その……気が早いかも知れんがおむつ替えなんかもちゃんと出来る父親になりたいんだ」

 これ、実はふわりが璃杜(りと)のお腹へ宿った時に、直樹が言っていたことの受け売りだったりする。

 ――子育てを妻だけに押し付ける男は最低だと思わないか、尽。そういう男を見るとさ、僕はお前も父親(おや)だろ?って……殴ってやりたくなるんだよね。だからな。お前も少しは自分で家事とか出来るようになっておかないと、将来大事な家族を守れないんじゃないかと心配になるんだ。

 ――もちろん、ハウスキーパーとか……プロの手を借りるのも悪くはない。だけどお前自身がある程度生活力を身に着けておけば、もしもの時に必ず役立つはずだ。ま、僕がお前を過保護にし過ぎてるのを自覚した上での自戒を込めた忠告なんだけどね。

 そう付け加えてきた直樹に、その時には『俺に守りたい家族(そんなもの)は出来ないと思うがな?』と聞き流していた尽だけれど――。
 天莉と出会い、彼女との子供が欲しいと願うようになってから、今更のようにその言葉が自分の中へ入ってくるのを感じた。
< 340 / 351 >

この作品をシェア

pagetop