崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
(27)Epilogue
「なぁ天莉(あまり)。ベランダのジャガイモを使って何か作ろうと思うんだが、どんなものなら食えそうかな?」

 天莉が、(じん)と暮らし始めてすぐのころ、尽と共に天莉の住んでいたアパートまで取りに行った家庭菜園の鉢植えたちのひとつに、深めの鉢に芽が出たジャガイモを植えつけていたものがあった。

 この鉢植えを天莉から見せられた時、尽はこれが無事実る頃――つまりは百日後も一緒に居ることを前提に『収穫が楽しみだ』と天莉に話して彼女を驚かせたのだけれど、その望みは見事叶ったと言える。

 天莉は尽がかつて要望した通り、五月末頃に無事収穫出来た五つばかりの立派なジャガイモを使って、根菜の味噌汁を作ってくれた。

 それにいたく感銘を受けた尽が、直樹の家からもらってきたという芽の出てしまった別のジャガイモを三等分にして新たに植えて――。

 いま尽が手にしているのはその第二陣が実を結んだジャガイモたちだ。

 今回は十一個も収穫出来て万々歳(ばんばんざい)の尽が、そのジャガイモを手に『何を《《作ろう》》か?』と天莉を振り返ったのだけれど――。

「……ホントにごめんね、尽くん。折角聞いてくれたのに……私、今は何にも食べられそうにないの」

 本来ならばそのジャガイモを使って天莉が尽に手料理を振舞ってくれるはずだったのだが、このところ天莉は吐き気と倦怠感に襲われて寝込んでいることが多く、それどころではない。
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