崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 つわりが酷いため、仕事は一応つわりが落ち着くまで休職という形を取っている天莉(あまり)だったけれど、(じん)としてはそのまま退職でも構わないんだが……とすら思っている。

(会社にいたらイヤでもあいつらの情報が入ってくるしな)

 副社長で、元・開発研究部所長だった尽のそばにいれば、特に――。

 今現在拘置所に収容されている江根見(えねみ)則夫(のりお)江根見(えねみ)紗英(さえ)風見(かざみ)斗利彦(とりひこ)横野(よこの)博視(ひろし)沖村(おきむら)三好(みよし)伊崎(いざき)不二男(ふじお)ら六名の話を、なるべくならば身重(みおも)の天莉の耳へ入れたくない尽だ。

 もちろん刑が確定した時には、顛末(てんまつ)くらいは話すべきだと思ってはいるけれど、極力天莉の心を乱したくない。

 とはいえ、仕事復帰に関しては天莉の意志を一番に尊重したいとは思っている。
 だがそれと同じくらい。天莉さえ許してくれるなら、彼女が産休・育休に入っている間に、そのまま畳み掛けるように二人目、三人目を……なんてことを考えていないわけじゃないから。

直樹(なお)んトコも(にぎ)やかになるしな。うちも負けていられないじゃないか)

 直樹と璃杜(りと)のところに二人目が出来たと聞いたのは、天莉の妊娠が分かる半月ばかり前のことだった。

 近しい間柄の人間の妊娠に、はっきりとは言わなくても『うちはまだかな?』と天莉が心乱されているのが分かって。こればっかりは授かりものだから仕方がないと思う一方で、正直尽自身も気持ちが()いたのは事実だ。

 だからこそ、それから程なくして天莉の妊娠が分かった時には二人して心の底から喜んだのだ。

 うまく行けば直樹や璃杜(りと)とは同級生の子を持つ親同士ということになるのだが、尽はいち早く二児の父親になる直樹に、育児休暇を勧めてみようと目論(もくろ)んでいたりする。

(――俺も取りたいしな)

 上が率先してそう言うことをすれば、他の男性社員らも申請しやすくなるはずだ。

 もちろん副社長としての仕事が忙しくないわけじゃない。
 だが、父親――田母神(たもがみ)(ひらく)も、初孫のことと思えばきっと、何とか取れるように善処してくれるだろう。
< 347 / 351 >

この作品をシェア

pagetop