崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 玄関扉を開ける際、(じん)が特に何かしたような気配もなくすんなり開錠された気がするのは、もしかしたら顔認証のような生体認証システムがロックになっているのかも知れない。

「何故そんな顔をするんだい? ――俺の計画では天莉(あまり)。キミが俺の子を生んでくれる予定なんだけどな?」

 だから天莉の意見も聞かせて欲しいと言っただけ。

 いきなりそんなことを言われて驚いた天莉が、あわあわと唇をおののかせるのを楽し気に尽が見下ろしてくるから。

(もしかして……揶揄(からか)われてる……?)

 尽の言動が一体どこまで本気なのか分からなくて、天莉は返答に詰まった。


***


(まぶ)しっ)

 二人が室内に入った気配で玄関と廊下のシーリングライトが勝手に点灯したところを見ると、人感センサーか何かになっているんだろう。

 いきなり明るくなった視界に目を細めた天莉は、今更のように現状を理解して青褪(あおざ)めた。

 変な質問を投げかけられてすっかり失念し掛けていたけれど、これは絶対にマズイ。

「あ、あのっ、高嶺(たかみね)常務、ここって……」

 背後でドアが静かに締まる音がして、それと同時。
 オートロックがカチャッと(かそけ)き音を立てて作動したのが分かって、不安がいや増した天莉だ。

「ん? 俺の家だけど? ……ああ。心配しなくてもひとり暮らしだから。変な気がねは必要ないからね?」

 その言葉に、天莉は『二人きりとか……! 逆に心配しかありませんよぅ!』と思わずにはいられない。
 
「――ね、天莉。さっきはああ言ったけど……最初はとりあえずここから二人の生活を始めるんでも構わないかな?って思うんけど、どうだろうか?」

「どっ、どうもこうもないですっ」

 天莉の心を置き去りに、尽が迷いのない足取りで廊下を進むから。

 天莉は下ろして欲しいと力の入らない身体で懸命に身をよじった。
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