崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
「えっ、嘘……なん、で?」

 ソファに所在なく座ったままオロオロとカーテンと(じん)を見詰めたら、「ああ、うちはスマートホームになってるからね」と何でもないことのように尽が微笑む。

 尽の説明によると、室内あちこちにあるスマートアシスタントに指示を出したり、あらかじめタイマーでアクションを設定しておくだけで、カーテンの開閉はおろかテレビやエアコンのオン・オフ、風呂の湯張り、コーヒーメーカーの作動なども出来てしまうらしい。

天莉(あまり)が一緒に住むようになったら、キミの好みの設定に変えることも出来るからね。その辺はおいおい一緒にすり合わせて行こうか」

 何でもないことのように言われた天莉は、「そのことなんですけど」と居住まいを正した。

「私、高嶺(たかみね)常務のお話をお受けするだなんて一言も……」

 意を決して言ったつもりだったのに、「――腹減ったよね? けど、まだ体調も万全じゃなさそうだし、変なモンは食わせられないなぁ。……夕飯は消化が良くて身体が温まるもの……。んー、そうだな。『うららか屋』のうどんでも取るか」と軽くスルーされてしまった。

「ねぇ天莉。キミは嫌いなモノや食べられないものはないはずだと《《認識してる》》んだが、間違いない?」

 聞かれて、思わず「はい」と答えてしまった天莉だ。

 でも、よくよく考えてみれば、どうしてそんなことを知っているのか、もしかして事前に自分のことを調べたりしていたのか……などなど、問い詰めるべきことは山積みだったはずなのに。


(もう、私のバカ! なに流されちゃってるの!)

 いくら体調が悪いからと言って、尽のペースに飲まれ過ぎだ。

 夕飯云々(うんぬん)の前に白黒つけたい事案があって、それをちゃんと話したいのに――。


 尽が携帯を操作して、高級うどん屋として有名な『うららか屋』へ電話をしている間、天莉は何も言えなくなって、仕方なく部屋の中を見回した。
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