崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 その立派さに気圧(けお)されて、天莉(あまり)は逆に色々冷静に考えてしまう。

 そもそも泊まる気で来ているわけではないので、天莉の荷物は仕事に持って行っていたA4サイズ相当のトートバッグひとつ切り。

 化粧直しのためのミニポーチは入っているけれど、メイクオフのグッズや、スキンケア用品まではさすがに持ち歩いていない。

(お風呂入りたいし、下着だって替えたいな? 服だってこのままじゃ着替えられないよね? 明日同じ服で出社するのは絶対イヤだ。フラれ女な上にそんなことしたら、ますます惨めになっちゃいそうだもん。身体も大分回復したし、家に帰らせて下さいってお願いするの、ありかな?)

 久々にちゃんと食事を摂ったからだろうか。
 さっきまでのような極端なふらつきはない。

 これなら家に帰らせてもらっても、ひとりで問題なく過ごせそうな気がする。


***


天莉(あまり)

 立派な部屋を(あて)がわれたものの、アレコレ思いを馳せていた結果、ぼんやり立ち尽くしたままでいたらすぐ背後の扉がノックされた。

 (じん)からは施錠できると聞かされていたけれど、当然まだ鍵なんて掛けていなかった天莉だ。

 突然のノック音にビクッと肩を跳ねさせて。
 でも服を脱いだり、だらしない格好をしているわけではなかったから。
 すぐにドアを開けてくれて構わないと言う意志を込めて「はいっ、どうぞ」と返したのだけれど。

 しばらく待ってみても何の動きもない。

(――あれ?)

 不審に思って天莉から恐る恐るドアを開けてみると、どうやら尽は尽で、中から天莉が扉を開けてくれるのを待ってくれていたらしい。

 自分の家とは言え、人に貸した部屋を勝手に開けるのはマナー違反だと心得ているらしい紳士的な尽の様子に、天莉は高嶺(たかみね)尽という男の育ちの良さを改めて再認識させられて。

 それと同時。
 ほぼ無意識に、(博視(ひろし)だったらきっと、ノックもなしに開けちゃってただろうな)と、またしても元カレとの差を考えている自分に気が付いた。
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