崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
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「家庭菜園とやらはベランダかな?」

 部屋の明かりをつけると同時に(じん)から問われて、天莉(あまり)は慌てふためいた。

「あ、はいっ」

 尽が立っているだけで、住み慣れた部屋が物凄く狭く感じられてしまうのは気のせいだろうか。

 尽のマンションにいる時には感じなかった圧迫感に、改めて彼のマンションは広かったんだなぁとしみじみ思ってしまった天莉(あまり)だ。

 天莉のワンルームマンションは二階にあって、玄関を入るとすぐ仕切り壁が真正面にあるため、くるりと向きを変えてその右手側をすり抜けるようにして部屋の中へ入るようになっている。

 そんななので入口が狭く、家財道具は全てベランダに面した掃き出し窓からロープで吊り下げて入れないといけなくて、引っ越しの時は結構大変だった。

 でもそのお陰で、風呂場や脱衣所兼トイレなどが玄関から死角になっているのがとても心地よくて。

 天莉が物件選びをした際、ワンルームマンションの間取りは、部屋に入るなりトイレやお風呂場の扉、台所などが丸見えになる物件が多かった。

 実は、ここのみそうではなかったのが、この部屋を選んだ決め手だ。

 玄関を入ってすぐ右手の壁に、ちょっとした作り付けの棚があったのも良かった。
 天莉はそんなに多くない靴たちをそこへ並べることで、狭い玄関ポーチに靴を出さないようにして広さを確保している。

 だけど――。

 つい今し方、天莉の二十三センチのパンプス横に並べて脱がれた尽の革靴の大きさに釘付けになってしまった天莉だ。

 尽の靴は、天莉のものより五センチ以上は大きかったから、玄関ポーチの占有率が半端なくて。

 彼の靴が一足あるだけで玄関が物凄く狭く見えることに、天莉は酷く驚かされた。

博視(ひろし)の靴も大きいと思っていたけれど、きっと高嶺(たかみね)常務のはそれ以上……)

(あ。私ったらまた……)

 ことあるごと、無意識に尽と博視を比べてしまっていることに、天莉はちょっとした自己嫌悪を覚えてしまう。

高嶺(たかみね)常務からの求婚を受けるつもりなんてないくせにこんな……っ。失礼過ぎるでしょっ)

 尽のペースに呑まれて、知らず知らずのうちに尽のことを異性として意識し始めていたことが原因なのだが、真面目な天莉がそのことを認めるには時間経過が少な過ぎた。
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