崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
 (じん)にそんなことを問い掛けながら、博視(ひろし)と別れた今、来年訪れる更新時にはその縛りはなくなるんだと気付かされた天莉(あまり)だ。

 でも、契約は一年近く先の話。
 現状では猫との生活はまだ当分の間お預け。

 それを今すぐにでも叶えてやろうと提案されて、心がぐらつかないはずがない。

 ソワソワと身を乗り出すようにして尽を見上げた天莉に、もう一押しと踏んだんだろうか。
 彼が端正な口の端に、微かな笑みを浮かべたのが分かった。

「もちろんだよ。うちのマンションにはどの生き物は駄目だなんて制約はないからね」

 天莉が望むなら猫は二匹までOK、大型犬だって迎え入れることも可能だと付け加えた尽に、天莉はモフモフまみれの生活を夢想して生唾を飲み込む。

 先程、尽は天莉の手料理を食べたいとも言ってくれた。
 しかも、そこに愛情をこめられても鬱陶(うっとう)しくないのだとも。

(むしろその方がいいって言ってくれたよね……)

 エプロン姿で尽宅の広いキッチンに立つ天莉の足元に、ふわふわの毛玉がニャーニャー鳴きながら二匹、真ん丸な目で天莉を見上げてまとわりついている。

(素敵……)


「ねぇ天莉。ひょっとして……うちに嫁いで来たくなった?」

 話のついでみたいにサラリと聞かれた天莉は、気が付けば夢見心地のままうっとり、「はい」と答えてしまっていた。

「言ったね? その言葉、忘れるなよ?」

 ククッと喉を鳴らしながらスマートフォンのボイスレコーダー機能をちらつかせてきた尽に、天莉はハッと我に返った。

 けれど、当然後の祭り。

 そのまま当たり前のようにスッと腰を抱かれて、「新聞、取りに行くんだったよね? 俺も一緒に行こう」と極上の笑みを向けられた天莉は、突如詰められた距離に「ひゃわっ」と色気のない悲鳴を上げた。
< 75 / 351 >

この作品をシェア

pagetop