崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
***
尽は家事などがからっきしダメで、粥を作ったことはおろか、米を研いだことも炊飯器を使ったことさえもないと言う。
天莉が熱を出しているのに気付くや否や、尽が真っ先に連絡したのは医者でも会社でもなく、秘書で 腐れ縁の伊藤直樹のところで。
電話が繋がるなり「天莉が熱を出した。看病したい」と端的に告げた尽に、直樹は開口一番「お前に病人の世話は無理だろう」とばっさり切り捨てた。
結局、ごねる尽に根負けした形。
しっかりマスク完備で尽のマンションへやってきた直樹が、尽にも不織布のマスクを手渡しながら「ごめんね、玉木さん。一応予防だけはさせて」と窓を開けながら申し訳なさそうに眉根を寄せて。
尽は直樹から押し付けられたマスクを不服げに見つめながら、「天莉から感染されるんなら俺は本望なんだがね」とか恐ろしくバカなことを言う。
「立場をわきまえろ。お前に倒れられたら僕が面倒臭い」
直樹に無理矢理マスクを装着させられる尽を熱に浮かされた状態でぼんやり見上げながら、天莉は懸命に『お願いします、常務。伊藤さんに従って下さい』と心の中で念じる。
直樹が言う通り、尽が寝込んだりしたら常務の補佐を務める直樹に思いっきり皺寄せがいきそうで申し訳ないし、何より役付きともなれば平社員の天莉とは抱えている仕事の重要度も違う気がして。
そんな尽を自分のせいで寝込ませてしまったらと考えるとゾッとしたのだ。
「玉木さんも自分のせいでコイツが寝込むのは嫌ですよね?」
直樹に問いかけられて、天莉は声が出せない代わり。必死にコクコクとうなずいた。
頭を動かすたび、こめかみ付近がズキズキと痛んだけれどそんなことは言っていられない。
しんどそうな天莉を見て、「一時的にハウスキーパーを雇うのはどうか」と提案してきた直樹に、しかし尽は首を縦に振らなくて。
「俺が何とかする」
自分が子供の頃から世話になっているという主治医に連絡を取って往診に来てもらう手配をした尽は、いざとなったら『クックアイ』という無料のレシピサイトで粥の作り方などを検索すると言い放った。
挙句、今日は仕事も極力リモートで済ませると言う。
そんな尽に直樹が溜め息混じり。
「好きにしろ」
と折れたのには、天莉が一番驚かされて。
案外高嶺尽と言う男は一度言い出したら聞かないところがあるのかも。
上に立つ人間にはそういう押しの強さがある程度は必要なのかな?と、うとうとと微睡みの縁に立ちながら天莉はぼんやりと思った。
尽は家事などがからっきしダメで、粥を作ったことはおろか、米を研いだことも炊飯器を使ったことさえもないと言う。
天莉が熱を出しているのに気付くや否や、尽が真っ先に連絡したのは医者でも会社でもなく、秘書で 腐れ縁の伊藤直樹のところで。
電話が繋がるなり「天莉が熱を出した。看病したい」と端的に告げた尽に、直樹は開口一番「お前に病人の世話は無理だろう」とばっさり切り捨てた。
結局、ごねる尽に根負けした形。
しっかりマスク完備で尽のマンションへやってきた直樹が、尽にも不織布のマスクを手渡しながら「ごめんね、玉木さん。一応予防だけはさせて」と窓を開けながら申し訳なさそうに眉根を寄せて。
尽は直樹から押し付けられたマスクを不服げに見つめながら、「天莉から感染されるんなら俺は本望なんだがね」とか恐ろしくバカなことを言う。
「立場をわきまえろ。お前に倒れられたら僕が面倒臭い」
直樹に無理矢理マスクを装着させられる尽を熱に浮かされた状態でぼんやり見上げながら、天莉は懸命に『お願いします、常務。伊藤さんに従って下さい』と心の中で念じる。
直樹が言う通り、尽が寝込んだりしたら常務の補佐を務める直樹に思いっきり皺寄せがいきそうで申し訳ないし、何より役付きともなれば平社員の天莉とは抱えている仕事の重要度も違う気がして。
そんな尽を自分のせいで寝込ませてしまったらと考えるとゾッとしたのだ。
「玉木さんも自分のせいでコイツが寝込むのは嫌ですよね?」
直樹に問いかけられて、天莉は声が出せない代わり。必死にコクコクとうなずいた。
頭を動かすたび、こめかみ付近がズキズキと痛んだけれどそんなことは言っていられない。
しんどそうな天莉を見て、「一時的にハウスキーパーを雇うのはどうか」と提案してきた直樹に、しかし尽は首を縦に振らなくて。
「俺が何とかする」
自分が子供の頃から世話になっているという主治医に連絡を取って往診に来てもらう手配をした尽は、いざとなったら『クックアイ』という無料のレシピサイトで粥の作り方などを検索すると言い放った。
挙句、今日は仕事も極力リモートで済ませると言う。
そんな尽に直樹が溜め息混じり。
「好きにしろ」
と折れたのには、天莉が一番驚かされて。
案外高嶺尽と言う男は一度言い出したら聞かないところがあるのかも。
上に立つ人間にはそういう押しの強さがある程度は必要なのかな?と、うとうとと微睡みの縁に立ちながら天莉はぼんやりと思った。