崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
尽も立ち上がってこちらへ歩いてくるのを横目に、やけにぎくしゃくした足取りの課長に付き従って応接セットへと近付いた天莉だったけれど、「玉木さんはこちらへ」と、尽から追加の指示が来て。
尽に指し示されたのは、課長の対面側の席――今から尽が座るであろう側――だったから、天莉は思わず「えっ」とつぶやかずにはいられなかった。
それは課長も同様だったようで、大きく目を見開いて天莉と尽を交互に見遣って。
なのに尽はそんな課長の視線なんてお構いなし。
「聞こえなかったかね? 《《天莉》》、キミはこちら側だ」
不敵な笑みを浮かべてサラリと下の名を呼んで天莉の手を取ると、課長から引き剥がしてしまう。
尽が明らかに暴走しているのを感じた天莉は、執務室入口に控えた直樹にちらりと視線を投げかけてSOSを出したのだが――。
何故か直樹は小さくうなずくだけで尽の暴挙を止める気はないらしい。
(な、んでっ?)
頭が混乱する天莉をよそに、尽が「まぁ座って」と声を掛けてきて、皆で一応に着座したのだけれど。
課長と斜向かいに座る格好で、尽の隣へ腰掛ける形になった天莉は、非常に落ち着かない。
だって、これではまるで――。
「実はね、今日こちらへご足労頂いたのはとても個人的な話なんですよ、風見課長」
尽が口を開いた途端、室内の空気がピリリと張りつめて感じられた天莉だ。
単に尽の声音がうっとりするほどに洗練されたバリトンボイスだからというだけではないだろう。
恐らく今から尽が言おうとしていることが分かってしまって、血の気が引いてしまっただけ。
(ダメです、常務っ。そんなことされたら私……)
――ますます貴方から逃げられなくなってしまうではないですかっ。
ギュッと太ももの上に載せた手を握りしめたら、そこへ尽の温かな手がそっと載せられて。
「ひゃっ」
思わず真っ赤になって声を上げたと同時――。
「彼女は私の大切な婚約者だということを、《《天莉》》の上司である風見課長に《《だけは》》重々知っておいていただきたいと思いましてね」
尽が高らかにそう宣言した。
尽に指し示されたのは、課長の対面側の席――今から尽が座るであろう側――だったから、天莉は思わず「えっ」とつぶやかずにはいられなかった。
それは課長も同様だったようで、大きく目を見開いて天莉と尽を交互に見遣って。
なのに尽はそんな課長の視線なんてお構いなし。
「聞こえなかったかね? 《《天莉》》、キミはこちら側だ」
不敵な笑みを浮かべてサラリと下の名を呼んで天莉の手を取ると、課長から引き剥がしてしまう。
尽が明らかに暴走しているのを感じた天莉は、執務室入口に控えた直樹にちらりと視線を投げかけてSOSを出したのだが――。
何故か直樹は小さくうなずくだけで尽の暴挙を止める気はないらしい。
(な、んでっ?)
頭が混乱する天莉をよそに、尽が「まぁ座って」と声を掛けてきて、皆で一応に着座したのだけれど。
課長と斜向かいに座る格好で、尽の隣へ腰掛ける形になった天莉は、非常に落ち着かない。
だって、これではまるで――。
「実はね、今日こちらへご足労頂いたのはとても個人的な話なんですよ、風見課長」
尽が口を開いた途端、室内の空気がピリリと張りつめて感じられた天莉だ。
単に尽の声音がうっとりするほどに洗練されたバリトンボイスだからというだけではないだろう。
恐らく今から尽が言おうとしていることが分かってしまって、血の気が引いてしまっただけ。
(ダメです、常務っ。そんなことされたら私……)
――ますます貴方から逃げられなくなってしまうではないですかっ。
ギュッと太ももの上に載せた手を握りしめたら、そこへ尽の温かな手がそっと載せられて。
「ひゃっ」
思わず真っ赤になって声を上げたと同時――。
「彼女は私の大切な婚約者だということを、《《天莉》》の上司である風見課長に《《だけは》》重々知っておいていただきたいと思いましてね」
尽が高らかにそう宣言した。