敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
3 社長の迷い
カーテンの隙間から陽光が射し込んでいる。全然眠れないまま朝になってしまった。

ホテルに泊まった三日前、朝になり目を覚ましたら、優介は部屋にいなかった。
身なりを整えロビーに降りると、彼はラウンジでコーヒー片手に新聞を読んでいた。

ビシッとモノトーンのスーツを着て、長い足を組んで優雅に座る優介は、雑誌の一頁かと見紛うほどカッコよく洗練されていた。
その姿を遠くから眺める女性客もちらほらいる。

人の気も知らないで、なに注目浴びながら朝の時間を満喫しちゃってんのよ……。

私なんて優介に受け入れてもらえない現実があまりにも辛くて、目を閉じて夢の中に逃避したまま朝を迎えたというのに。

そんな絶望の深淵ともいえる状態で、さらにショッキングな出来事が私を襲った。

昨日の仕事終わり、平岡さんから『雰囲気のいいカフェバーがある』と聞いた私は、行ってみようという気になった。

優介は予定があるとかで、そそくさと帰宅。
たまにこういうときがある。たぶん、女性と会っている。

だから私も優介から離れて、もっと広い世界を知るために行動しようと思い立ったのだ。

平岡さんから詳しい場所を聞いた私は、オシャレな料理と飲みやすいワインを一杯だけ堪能し、ほろ酔い気分で駅まで向かっている途中。
優介と女性の抱擁シーンを目撃してしまった。

表情までは角度的に陰になって見えないが、優介は爪先立ちの相手の体を抱き、ぴったりと体を密着させている。

公衆の面前で抱き合うなんて……。
心が痛くて、肺は運動を放棄したらしく、呼吸がうまくできなかった。

今すぐにでもここにうずくまりたい、と思ったとき、あろうことか優介と目が合った。
数メートルという距離を物ともせず、彼は呆然と立ち尽くす私を見つけたのだ。

さらに体に電流が走るようなショックな気持ちに追い打ちをかける。
ふたりが離れたとき、相手の女性の顔が見えた。

奥口さんだった。
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