敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
4 ふたりの愛
こめかみから後頭部にかけて鋭い痛みがズキンと走る、最悪な朝。
浮腫んだ顔を隠すようにうつむき加減でリビングに行くと、普段通りエプロン姿の優介が私を迎えた。

「おはようございます、珠子さん。トマト、食べられますか?」

優介はトマトサラダが盛られたお皿を手にしている。

「……ごめん、今日はいい」
「わかりました」

今日の二日酔いは重く、食べられる気配がしない。

優介はそんな私の体調を見越し、テーブルにお水と薬を用意してくれていた。そつのない行動に感心する。

私なんて昨夜の車内での出来事を思い返すと、取り乱しそうになるというのに。
この平静っぷりはどこからくるのか。

『俺にとってはいつものことですけど、珠子さんは控えてくださいね』

……ああ、そうか。
キスだって、優介にとっちゃいつものことなのかもしれない。

奥口さんとの密着シーンを思い返して気が滅入る。
優介と距離を置こうとしたのに、結局昨日は助けられて、行動に一喜一憂した。
自分が情けなくて泣きたくなってくる。

自己嫌悪の中、優介とともに出社した。

「珠子社長」

朝礼が終わり、ひとりメールチェックしていると、平岡さんが心配そうな顔で社長室にやって来た。

「顔色が優れないようですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、今朝は二日酔いが重くて……。でもかなりよくなってきました」

心配をかけて申し訳なくて、心ばかり微笑む。

「昨夜はひょっとして、私がオススメしたカフェバーに行かれたのですか?」

平岡さんの質問に、私はかぶりを振った。

「いえ、昨日は違うのですが、先日伺いましたよ」
「そのとき、沖田くんに会いませんでした?」
「どうしてそれを……」

訳知り顔の平岡さんを前に、私は目をしばたたかせる。
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