言の花箱~交響詩片~

ガラスの小瓶

誰もいない浜辺
子守唄のような
波の音だけが木霊する
朱の世界
生命の神秘を現そうと
自らの命を燃やし
名画のように煌く夕日

朱の色に支配された
海と時間
そして海に揺れる
ガラスの小瓶
波に運ばれ
永い旅をする
たどり着くべき大地を求め
波に揺れる・・・
夕日はただそれを
見つめるだけ
声もかけず
見つめる
ただ それだけ
朱から紅へ
今命尽きようとする
バラの如く紅い
空・・・時間
そして海
すべてが一日の終わりを告げ
夜の闇に身を委ねようと
安息の床を探す

紅いベッドに眠る
ガラスの小瓶は
明日の光を夢見ながら
眠りに落ちる
沈み行く紅日は
沈み消えてもなお
月を照らす
終わりない陽の旅
いつか終わる小瓶の旅

紅から闇へ
海風が陸風に変わるとき
波は凪ぎ 無音の世界が来る
死の世界ような時
新たな光が現れるまでの
一時の消滅の時間
闇の中ガラスの小瓶は浮かぶ
ただ浮かぶだけ
朝の光が再び海を
輝かせるその時まで
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