排他的に支配しろ
「あ、ちょうど開いた」
──目が合った。
ああ、やっぱり、想像していた通り。
彼はわたしだとわかると、ふわっと柔らかく笑う。
こんな風に笑う子だったんだ。
「──《支配》」
久しぶりにそっちの名前で呼ばれた……と、逆転する日が来るとは思っていなかった。
コードネーム《心理》。
視界に入った他人の意識を読み取ることができる超能力者。
行動が読めるからこそ誰も意識しない逃げ道を探し出せ、組織に目立たずに溶け込め、監視されているカメラの位置に気付ける。
「ずっと会いたかった」
目にかかるほどの長さで切り揃えられた黒髪を小さく揺らし、《心理》はわたしを抱き締めた。
伝わってくる鼓動は早く、肩が上下している。
彼を頭ごなしに非難できないのは、きっと彼がわたしのために動いてくれていたからだ。
「……一人で来たの?」
「《支配》がここにいるって教えてもらったから」
「教えたのは百鬼さん、だよね。百鬼さんは?」
「一人で行く方が早かったから置いてきた。早く《支配》に会いたくて」