排他的に支配しろ


 道路をびしょ濡れの子が歩いてたら、心配になるでしょ。

 さすがにあのときは、百鬼 天鳳の一人息子だとは思わなかったけどさ……。



「ともかく、《支配》は俺がもらいますね?」

「……あぁ、いいだろう」

「あ、それと……」



 もう一人のことも……と言いかけたとき、ズボンのポケットでスマホが震えた。

 出掛けるときに使う緊急連絡用のスマホ。

 俺にしか頼れない場合のみ連絡するよう言ってあるものだから、天鳳に断りを入れて確認した。

 また喧嘩の仲裁とかじゃないといいけど。



「はいはい、どうした~?」

『春日様……っ!』



 切羽詰まった繚の声。

 彼がここまで焦るのも珍しい。



『り、臨さんが……』



 その名前に、体が反応する。



「……! りんがなに?」



『臨さんが逃げました、キョウダイを名乗る男と一緒に……!』



 ────目の前が真っ暗になった。



『渡していたGPS付き小型カメラも気付かれて破壊されたようです。乱丸さんが最終信号付近でドローンを飛ばしていますが、見つかっておらず……』



 声が遠くなっていく。

 ゴトン! とスマホを落とした音で我に返った。


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