排他的に支配しろ


 研究員の言いなりになっているかと思いきや、座学の時間にはバレないようにサボっている。

 一応、能力の成果は芳しくないらしいけど、研究員を騙している可能性も隠しきれない。

 要領が良いって、彼みたいな人を言うのだと思う。



「──……というわけなんだけど、《心理》はどう思う?」



 《正義》から聞かされたのは、この研究所、ひいては一抹製薬を無に帰すための、悪魔のような提案。

 ようやく、穏やかな笑みから黒いものが滲み出ているのが見えた気がする。



「……自爆して、他のキョウダイを逃がしたいって? 慈善活動のつもりなのか知らないけど……、」



 おれは反対だ、言おうとしたそこへ《正義》が被せる。



「《支配》を助けたくない?」

「……なに。なんのこと」



 ドキリと心臓が跳ねた。

 《正義》はふっと笑い、言葉を続ける。



「彼女が特別なんじゃないの? 《支配》に対する目線だけいつも違うよね」



 《支配》は《禁忌》と同じ遺伝子を持った、最も期待値の高かった子供だ。

 しかし《禁忌》のように全能的な超能力を持って生まれなかった。

 ただし、優れた人心掌握が資金工面で重宝されている。

 加えて人を疑わない純粋さと従順さ。

 研究所のお気に入りになるわけだ。


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