排他的に支配しろ


 一つ置くのに悩んでしまうわたしに対して、春日さんは迷いが一切ない。

 経験の差といえば、それまでだけれど……。



「りんはさあ、好きなことってある?」



 どうやら春日さんには、雑談をする余裕まであるようで。

 

「えっと……、う、運動と勉強が好きでした」

「それもいいね。知識を蓄えるのは俺も好き」



 わざとわたしの集中を欠こうとしているわけではないのだろう。

 しかしどんどん石が黒く染まっているような気がして、焦りが積もる。

 視界を狭め、盤上だけに集中した。

 おせろの様子と、石を置くためのわたしと春日さんの手。わたしの目にはそれだけが映っている。


 そこへ、ふわりと白い煙が目の前を揺らめいてきた。

 空気と共に肺へ吸い込むと体はそれを拒み、咳き込みたくなる衝動に襲われる。



「──ぁ、」



 刹那、全身の毛が逆立つような感覚に埋め尽くされた。

 手の震えで、持っていた石が地面に落ちる。

 喉の奥から立ち込める不快感。脳内へ断続的に流れ込んでくる雑音と静止画。


 研究所を黒い煙が包んでいる。

 先生達の通話が遠くの方で聞こえてくる。



 ────おい! 子供達は……!?

 ────……え? 《正義》が?

 ────ああ、《支配》は問題ない。


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