排他的に支配しろ
美化……?
そんなつもりはなかったけれど。一体どこを美化しているというのだろう。
「一回助けたからってずっと良い人とは限らないことを覚えないとねえ?」
「でも……光峰さんとか、皆さんも春日さんを信頼されてます」
「いや、信頼じゃなくて、あれは……」
そこで、春日さんは喋らなくなった。
何かを考え込むように、わたしの腰に回す手に力を入れる。
「……、とにかく。もう少し危機感を持たないと……悪いお兄さんに悪いことされちゃうよ」
体が離れた。春日さんは下を向いて表情を確認させてくれない。
かと思えばパッとこちらに対して笑顔を見せる。
「シャワー浴びておいで。出て俺の部屋に来てくれたら──俺が悪いってこと、教えてあげる」
知りたくないなら来ないでね、と残し春日さんの熱は遠ざかっていった。
危険な香りは、確かにした。
なのにわたしはどうしても、春日さんが悪い人だとは思えない。
シャワーを命じてきたのだって、考えるための猶予をくれたと、そんな気がして。
これが春日さんの言う美化なのだとすると、もう手遅れだった。