排他的に支配しろ
《献身》
部屋に、光の筋が差し込む。
現れたその人は、ゆっくり歩を進めてわたし達を見下ろした。
身にまとった黒いスーツが、わたしを押し倒すルイくんに影を作る。
どうして。
だって、今日は帰って来ないんじゃ……。
「こら、なにやってんの」
彼──春日さんはその場でしゃがんで、コツンとルイくんの後頭部を小突く。
衝撃で、わたしの胸元にぽたりとシミができた。苦しそうなルイくんの嗚咽が聞こえ始める。
「カスガ、くん……っ」
「……うん、どうした?」
相槌の声は優しい。
さらに助長させる原因になったのか、ぐしゃぐしゃになったルイくんから涙の粒が降り注ぐ。
「っ……ぼく、できなかった……」
そう言うと、わたしから離れた。部屋の端に体を引きずらせ、じっと丸まる。
ルイくんはずっと辛そうだった。
わたしもどうするのが正解かわからなくて、思わず身を任せる選択をしまったけれど。
春日さんが来たとき、ほっとしているように見えたのだ。
助かったのは、わたしだけではないかもしれない。