ダイヤモンドのような恋

「き、今日、
 入学式だぁ〜っ!」


お母さんが
やっと思い出したの?
というように
笑ったのがわかった。



「もぅ〜…。
 なんで
 起こしてくれなかったの?
 お母さん!」



急いでベットから出て
扉を開けながら、
少しだけ強めに言った。



「起こしたよ?
 沙月ぃ〜って。
 でも全然さぁちゃん
 起きないんだもん。」



「だ、だって…
 まさか今日だなんて…。」



ようやく
脳が働き出したみたいだ。


すぐさま準備を進め、
20分後には
なんとか出発できる格好に
なっていた。



「沙月ぃ!
 優子ちゃんが来たわよ!」



「ふん!ひょうひふ!」



口に押し込んだパンを
とても邪魔に思いながら、
返事をした。


聞き取りにくい声だったと
思うけど、
お母さんは私の
「うん!もう行く!」が
わかったようだ。

「早く用意しなさいね」とだけ
返してくれた。
さすがお母さん!



学校用にするつもりの鞄を
玄関まで持っていって
筆箱やらファイルやらを
適当に入れる。



「大丈夫?」



優子が少し
首を傾げながら
私に聞いてきた。



「ん……んぐっ。
 うん!だいじょうぶ!」



ムリヤリ
大袈裟にパンを
飲み込んだ私を見て、
優子が楽しそうに笑った。



「じゃあ行こっ!
 遅れちゃう…!」



「うん!行ってきます!」



家の中から
「行ってらっしゃい!」
と一言聞こえて、
なんだか嬉しくなった。

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