クールな君と愛しすぎる僕
その後、ゆっくり家路についていると………
「━━━━━━関水さん?」

突然、後ろから声をかけられた。

「え?あ、羽馬(はま)さん?」
「お疲れ様でーす!」
人懐っこく寄ってくる、羽馬。

「お疲れ様です」
「誰?寧音ちゃん」
そんな羽馬に、やっぱり淡々と挨拶する寧音。
登羽は、寧音の顔を覗き込むようにして問いかけた。
(寧音以外を視界に入れたくないから)

「職場の後輩。
あ、ほら。前に紹介したいって話、したことあるでしょ?」
「あ、あぁ…」
ぶっきらぼうに返事をし、チラッと羽馬を見る。

「嬉しい!こんなとこで、関水さんに会えるなんて!
彼氏さんにも会えたし!
初めまして!関水さんの後輩で、羽馬 真未(まみ)です!」
そんな登羽にも気にも止めず、食い入るように話しかける。

「…………こんにちは」
「………」
寧音は、登羽を見上げて驚愕していた。

全く……一ミリも…表情が変わらないのだ。
まるで自分を見ているように………いや、自分よりも表情がない。

別人のような登羽に、驚きを隠せない。

登羽の機嫌が、あっという間に悪くなっていく。


「羽馬さん、私達ちょっと急いでて。
悪いんだけど、ここでいい?」

とにかく、羽馬さんには引き取ってもらわないと…!
そんな思いで伝える。

「えー!お茶しましょうよぉー!」
淡々とした寧音の手首を掴み、甘えるように声をかけてくる。

「ごめんなさい」
寧音は、その羽馬の手をさりげなく外し言う。

「えー」
「ごめんなさい」

「えー、わかりましたぁ…
…………じゃあ、また会社で!」
やっと退いた羽馬。
不服そうに、踵を返した。

「えぇ。また」
羽馬を見送り、寧音は息を吐く。
そして、登羽を見上げた。
「ふぅー
……………ごめんね。登羽」
「………」

あいつ(羽馬)、邪魔だな━━━━━━━


「━━━━わ?登羽!」
羽馬をどうやって“掃除”しようかと考え込んでいると、寧音が見上げていた。

「え?あ、ん?」
少し不安そうに瞳が揺れていて、登羽は優しく寧音を見て言った。

「怒ってる?」
窺うような、寧音の言葉。

「怒ってはないよ。でも、あの子しつこいね。
まだ、言ってきてるの?」
「え?うん。まぁ…」

「ふーん、とにかく気分悪い。
寧音ちゃん、いつものして?」


寧音は頷いて、登羽に抱きついて「好き、好き、好き…」と囁き、キスを繰り返したのだった。
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