クールな君と愛しすぎる僕
「寧音ちゃん、行かないで?」

「でも、仕事だから」

「じゃあ、辞めてよ仕事。
僕の稼ぎだけでも、十分余裕で生活できるよ?」

「でも今仕事が楽しいから、できれば辞めたくない」

「………」

「ごめんね、登羽」

玄関で、必ずといっていいほど駄々をこねる登羽。

「………わかった。
じゃあ“いつもの”して?」

頷いた寧音は、背伸びをして背の高い登羽の首に手を回して抱きついた。
頬にキスをする。
「登羽、好き、好き、好き」

そして登羽に向き直り、頬を包み込んで口唇にキスをした。

「フフ…ありがと!
僕も、好き~!」
今度は登羽が、寧音に深いキスをするのだった。


やっと外に出してもらい、エレベーターへ向かう。
ボタンを押す。
すると、タタタッと駆けてくる足音がして後ろから抱き締められた。

「寧音ちゃん、やっぱ会社まで送る!」

やっぱり━━━━
と、寧音は思う。

とにかく離れることを嫌う登羽。
“会社まで送る”と言うのも、毎日の事だ。


指を絡め合って繋ぎ、駅に向かう。
~~~♪
少し鼻歌を歌い、心底楽しそうに歩く登羽。

「楽しそうね、登羽」
「うん!
でもね、楽しいのは寧音ちゃんの職場までだけだけどね!」

「………」
「寧音ちゃんが仕事に行っちゃったら、地獄だよ?
僕一人で、あの広い部屋で留守番だから」

「広い…かな?」

「広いよ!もっと狭い部屋に引っ越したいくらい!
やっぱ、寧音ちゃんが元々暮らしてたアパートで良かったんだよ!」

「それはさすがに…
私は、もう一つ部屋を増やしてもいいと思ってるくらいなのに」

「えー!なんでー!?」

「だって登羽、ダイニングで仕事してるでしょ?
仕事部屋欲しくないの?
それに私が家にいる時、仕事の邪魔でしょ?
1DKの部屋って言ったって、間取り的に邪魔しないように部屋に行ってるねってこともできないし」

「全!然!
信じられないかもだけど、寧音ちゃんが傍にいる方が仕事がはかどるんだよ?
だからずっと、傍にいて?」

そして駅に着いて、電車に乗る。
二駅後の駅に着いて、歩いて20分。
寧音が働いている会社に着く。

ビル前で、やっぱり駄々をこねる登羽をなだめてそこでやっと二人の手が離れた。

「じゃあ、行ってきます登羽。
ありがとう、送ってくれて」
「うん、気をつけてね!寧音ちゃんは可愛くて美人だから、すぐ目をつけられるんだから!
何かあったら、すぐに連絡して?
僕が助けに行くから!」

「うん、ありがとう」
小さく手を振り、会社に向かう寧音。
登羽はスマホを取りだし、寧音の写真を撮る。

寧音が見えなくなるまでひたすら撮り、登羽は息を吐いた。
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