クールな君と愛しすぎる僕
「━━━━やっと辞めたんだー」
(遅いよ……!!)

羽馬が退職した日の帰り、いつものように迎えに来た登羽に話すと返ってきた言葉だ。

言わずもがな、全て登羽が仕込んだこと━━━━━━

「やっと?」
「うん、やっと。
だって寧音ちゃん、とっても困ってたでしょ?」

「え?」
「仕事を真面目にやってくんないって言ってたでしょ?
それって、その後輩のことでしょ?」

「あー」
確かに、羽馬が入社してすぐの頃。
登羽に相談したことがあるのだ。

“どうすれば、真面目に仕事を取り組んでもらえるのかな”と。

「最近、疲れてばっかだったし……
ベッドに横になって、ちょっとチューしただけですぐ寝ちゃってたでしょ?」

「あ…まぁ。
確かにお腹いっぱいになって、お風呂入ったらもう眠くなってたかな」

「でしょ?
僕はそのせいで、欲求不満だよ!」
(まぁ、睡眠薬は使わずに済んでたけど)

「欲求不満って…」

「ってことで!
早く帰って、ラブラブイチャイチャしようね~!」

寧音の手を引っ張り、足早に家路につくのだった。



その日の夜。
夕食後に、いつものように登羽の淹れたコーヒーを飲んで眠った寧音。

寧音のバッグの中身をチェックする。
「…………んー、大丈夫…かな?
………ん?何、これ。
寧音ちゃん、こんな物持ってたかな?」

真新しいコスメポーチだった。

「てか、ポーチを二つも持ってかないもんなぁ」
中身を確認してみるが、何も入っていない。

すると、タイミングよく?寧音のスマホにメッセージ受信音が鳴った。

何の躊躇もなくスマホのロックを外し、メッセージを確認する。
「ん?羽馬からだ……!」
羽馬から、メッセージが入っていた。

【関水さん、今までありがとうございました。
落ち着いたら、お食事でもしましょ?
また、連絡しますね!
ポーチ、凄く使いやすいので使ってくださいね!
真未】

「あー、羽馬からのプレゼントか…
いらないし…!」
呟いた登羽はメッセージを消して、ポーチをゴミ箱に捨てた。


しばらくして、寧音が目を覚ました。
「ん…あ…また、寝ちゃったんだ…」
ゆっくり起き上がる。

「フフ…お疲れ様!」
「うん」

「じゃあ寧音ちゃん、お風呂入って寝よ?」

登羽は寧音を抱き上げ、風呂場に向かうのだった。
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