クールな君と愛しすぎる僕
僕は寧音ちゃんから離れない
羽馬が退職して、落ち着いてきた頃。

「━━━━登羽」
「んー?なぁに?」

「昨日言い忘れてたんだけど……
今日ね。職場の同僚の子達にお食事に誘われたの。
だから、帰るの遅くなる。
夕御飯も、別々でお願い」

寧音の言葉に、思考が止まり固まる登羽。

「登羽?
登羽!」

「………」
登羽の顔の前で手を振り名前を呼ぶが、固まったまま。

「登羽!!」

「やだ…」
「え?」

「やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!
ダメ!!行かないで!!」
バッと寧音を抱き締め、駄々をこねるように言う。

「女性だけだし、今日ね、新商品の発売日なの。
みんなでやっとここまでありつけたの。
ほら、羽馬さんのことで色々あったから……
だから、お疲れ様の食事なの。
お願い、登羽。
行かせて?
もちろん、遅くならないように気をつけるから」
登羽の腕の中から見上げ、頬を包み込んで言い聞かせる。

「………」

「お願い、登羽」

「…………わかった。
わかったから、とりあえず今、チューして?」

「うん。
待ってね。今メイクしたばっかだから、リップを取ってから……」
ポーチから、メイク落としを取り出そうとする。

「早くして!!
そんなのいいから、チュー!!」

「うん、ごめんね」
急いで口唇の拭い、登羽にキスをする。
待ちきれないという風に、登羽も食いつくように貪ってきた。

あぁ…かなり、機嫌が悪くなってしまった。

登羽の怒っているようなキスが、それを表していた。



いつものように会社まで寧音を送り、駄々をこねて(軽く脅しに近いワガママ)寧音にキスを要求。

寧音が会社に入り、見えなくなるまで写真を取り続け、そのまま貸し倉庫へ向かった。

「はぁー、寧音に夜まで会えない」
リクライニング式の一人用椅子に腰かけ、寧音の私物を見つめる。
目を瞑り、寧音の香水の香りを感じる。

「あーーーー!!もう!!」

今日は登羽も、仕事が忙しい。
デザインを、クライアントに送らなければならない。
自宅に帰り、仕事に取りかかるのだった。


なんとか仕事を終わらせ、デザインを送る。
「お腹空いたな…」

昼食もとらずに仕事をしていたため、寧音のことを考えずに済んだのだが、終わるとぽっかり穴が空いたように苦しい。

カップラーメンを食べ、コーヒーを飲んでいるとスマホが鳴った。
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