クールな君と愛しすぎる僕
「━━━━寧音ちゃん!おかえり!」

仕事が終わり、会社を出ると登羽が待っていた。
タタタッと駆けてきて、抱き締められる。

登羽は、寧音の匂いを嗅ぐ。
「━━━━━!!!!?
寧音ちゃん!」
バッと寧音を勢いよく離す。

「え?」

「煙草の臭いがする!!なんで!!?」

「え?私、喫煙所には行かな━━━━あ!」
(祥生だ……)

祥生は、ヘビースモーカー。
いつも煙草を臭いを包んでいるような男だ。

「誰!!?まさか、男!!?」
責め立てるように言う、登羽。

怒り、悲しみ、苦しみが混じったような表情だ。

「たぶん、祥…あ、いや、和光さんだと思う」

「和光?」

「うん。転勤から帰ってきた、同期の社員さん」

「元彼でしょ!?」

「え?なんで、そう思うの?」

「だって転勤から帰ってきた奴と、煙草の臭いが移るくらい接近してたんでしょ?
そんなの、元彼くらいだよ」

「登羽…」

「どんな話したの!?
どこ触られた!?
煙草の臭いが移るくらいだもん!
もしかして、抱き締められた!?」
責め立てるように、寧音に言葉をぶつける。

「登羽!ちょっ…落ち着いて!」

「やだ!」

「登羽!!」

「やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!やだ!」
完全に我をなくした登羽。
取り乱し、寧音を強く抱き締める。

「大丈夫だから!
私は、登羽から離れたりしないよ!」
寧音は顔を上げ、登羽の目を真っ直ぐ見て言い聞かせるように言う。

「ほんとに?」
捨て犬のような、登羽の瞳。

寧音はできる限り微笑み、頷いた。
「うん。
和光さんとは、三年前に別れてる。
私はもう…登羽しか見てない。
離れないよ。
和光さんにも、ちゃんと伝えたよ?
“私は登羽と生きていきたい”って」

「………じゃあ…証拠、見せて?」


「証拠?」


その場で、祥生を呼び出した寧音。

登羽が「紹介して?」と言い、寧音は祥生に登羽を紹介する。

「こちら、恋人の辰沼 登羽さん。
登羽、こちらは和光 祥生さん」


「こんにちは!
寧音の“愛する彼氏の”辰沼 登羽です!」

登羽は、満面の笑みで挨拶したのだった。
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